「天気に関係なく気軽に街を移動したい!」3人の中高生による、「WE:BIKE」プロジェクト。「雨の日の移動が嫌」と「みんなが使える乗り物」というワガママからスタートして、「シルバーカーに雨よけの屋根をつけて、自分たちが乗りたくなるようにかわいく改造する」という彼女たち3人ならではの発想が生まれました。
実験走行では、神戸市の協力も得て、公道で実際に走行しながら屋根つきシルバーカーの乗り心地を確かめたり、市が運用しているシェアサイクル「コベリン」に雨よけの屋根をつけてみたりと、行政も巻き込んでのプロジェクトに発展。
「みんな」というのは「どこかにいる誰か」ではなく、まず「私たち自身」。自分たちが使いたいものやサービスを考えることが、いろんな人にとって使いやすいものになる。自分たちのワガママにとことん向き合ったからこそ、周りを巻き込むプロジェクトになりました。
「やりたいことをここまでやっていいんだな」という驚き。
ワガママSDGsに参加したのは、前半の講義で勉強しようという気持ちが大きかったです。実際にプロジェクトが始まってみて、こんなに自分から発信するんだというのにびっくりしました。うまく意見が出てこないこともあったけど、自分から出しちゃえば他のメンバーからも出てくるっていうのもあって、まずは口にするのが大事だなとか、誰も喋らないと喋りにくいよなとか思うようになりました。
こんなワガママでいいんだろうか、できるんだろうかという不安はありました。私自身は「雨の日に傘が浮いたらいいのに」って言ったことから始まったんですけど、できると思ってなかったんです。ぽろっと言ったことがいろんな人の思いと重なって、実際にモビリティーを考えるところに結びついた。やりたいことをここまでやっていいんだなっていう驚きがありました。こんなに応えてもらえるんだ、広げてもらえるんだって思って楽しかったです。
プロジェクトを通して、シルバーカーや電動車椅子って意外と街中に結構あるんだなって目が行くようになりました。社会を見る視点が変わった感じ。もともと街づくりに興味があったんですけど、今回「みんなが乗れるモビリティー」にこだわって作ってみたことで、「みんなが暮らしやすい街」ってなんなんだろうってもっと考えてみたいと思うようになりました。大学進学に向けての学部選びもより具体的になったと思います。
SDGsって勉強することじゃなくて、実際に行動することだなって。
自分がやりたいことをしたいと思ってワガママSDGsに参加したんですけど、いざ聞かれると意外と分かんないなって思ったんです。学校の授業って基本的に与えられるだけだし、自分がしたいことを言う機会がそもそもないのでやったことないし。ちゃんと聞いてもらえるかなっていう不安があったので、自分がしたいことを言うことがまず挑戦でした。
私自身は、シェアサイクル的なものがもっと使いやすくて親しみやすいものになればなっていうところが出発点でした。決済がクレジットだったり年齢制限があったりして、特に私たち学生は興味はあるけど使えなかったりするので、そこをなんとかしたいなって。そういうシェアリングサービスについての活動は、今後も続けたいなと思います。使える対象がどんどん広がっていけば、どんどん楽しくなるんじゃないかな。
実際に電動車椅子の販売店にお話を聞きに行ったり、神戸に行ってチームのみんなと実験したり、メンターさんたちから現実的な話をたくさん聞いたりすることで、新しい発想が出てきて。SDGsって勉強することじゃなくて、実際に行動することを言ってるわけだから、自分で動いてみるとより現実味が増しました。だから、他でやってる人やいろんな会社の取り組みを見ても、これ大事だなって自分で思えるようになったのは大きいなって思います。
ワガママもSDGsもたぶん全部繋がっている。
私自身は「雨の日に通学で自転車で移動するときに濡れるのが嫌だな」っていうのがもともとのワガママでした。時間的な制約もあったのでプロジェクトを進めるのが大変だったこともあったけど、自分でやりたいって言ってやったからここまでできたんじゃないかなっていうのは思っています。
プロジェクトを通して、いろんな視点を持てたことが大きいなと思っています。例えば、問題の一個前に戻って考えること。屋根をつけることで雨に濡れないようにするっていうのはできたけど、いろんな年代の人に乗ってもらいたいとなったときに、なんで乗ってもらえないんだろうってなって。私たち自身の「シルバーカーってださいよね」っていう思い込みをいったん外して、「じゃあなんでださいんだろう」っていう問いを立ててみたら、色とか形とかカゴとかアレンジすることでかわいくなるじゃんってなったんです。それは実物のシルバーカーの改造をしてみたことが大きいかも。
自分たちのワガママも、多分どんどん派生していったらSDGsの問題に繋がるなって思うようになりました。シニアカーは高齢の人が乗るものっていう固定概念や当たり前を外していくことで、いろんな人にとっての移動の問題の解決に繋がるなって思ったように、SDGsの一つ一つの問題が独立してるわけじゃなくてたぶん全部繋がっているんじゃないかなっていうのは、いま感じていることです。
(構成・文:山本しのぶ)