行動したら、「頭で思い描いていたこと」以上が起こった。【中高生の居場所チーム】

協働プロトタイピング

8月末、「◯◯な場所がほしい」を共通項に集まった4名(+2名の計6名)の中高生。でも、○○の中身は「学生どうしが気兼ねなく交流できる」「障がいをもつ人との接点」「Wi-Fiがつながる自習室」「ペットと穏やかな避難所生活」とバラバラ。「みんなのやりたいことの最小公倍数をとって『学生の交流施設だね。その1個をつくろう』」(ゆう・高1)とゴールが定まり、体当たりの物件探しが「アスタくにづか」(神戸市長田区)にまとまる頃には、10月末を迎えていた。「一時は、このまま物件が見つからずに終わるのかなって思った」(ゆづぽん・中3)一方で、「自分たちで動いて大人の方たちと直接コンタクトをとっていくなかで、社会の中の一人の人間として対等に接してくださったことが嬉しかった」(のん・高2)経験を重ねた。

11月下旬から1月末までオープンした「学生の学生による学生のための場所」では、ただ中高生が集うだけでなく、チョコ作り、キャンドル作り、ピザパーティー、忘年会、DIYなどのイベントも開催。「Twitterアカウントを作ったけど、最後までそこから1人も集客できなかった」(はるき・高1)ものの、運営メンバーの友人たちが参加して、他校&他学年交流を繰り広げていた。なかには、運営メンバーに混じって自然とイベントを作る側に回っていた参加者も。


マクドナルドで無言で指差し注文していた私が、隣のオフィスに「印刷させてください」と。

周りを困らせるから言ったらダメなこと–––––私にとってワガママはそんな存在でした。でも今回、「家じゃないけど、家でできることができる場所がほしい」という自分自身のワガママが根本にあったからこそ、WEBサイトのフォームから不動産屋さんに「こんな物件はありませんか?」と問い合わせることも、隣のコワーキングスペースを一人で訪ねて「ポスターを印刷させてください」とお願いすることも冒険できたように思います。マクドナルドで注文するときに声がうわずるくらい緊張するタイプなので、お隣を訪ねる前には、ドアをノックするところから原稿を書いて、チームのみんなにロールプレイングに付き合ってもらいました。

中学生が何を言っているんだと門前払いを受ける不安が大きかったけれど、不動産屋さんもコワーキングスペースの方も、びっくりするくらい親切でした。しどろもどろでも熱意と必要な情報を伝えたら、受け入れてくださるんだなって。思っていたよりも、社会は柔らかかったです。

物件探しもイベントも、「無理かもしれない」が「あ、できる!」に変わる瞬間をからだで学んだ。

僕がワガママSDGsで活動しているのと同時期に、学校の友人たちがビジネスコンクールに出ていたんです。彼らが馴染みのメンバーでビジネスプランを立てて結果を出している姿に、焦ることもありました。僕らのチームは全員が「はじめまして」で、1軒目の物件の下見で初めて顔を合わせるまでは、オンラインでの話し合いも停滞しがちで。下見の帰り、みんなで昼ごはんを囲んでいろいろしゃべったのが、チームのエンジンがかかった瞬間だったと思います。ワガママSDGsでは、チームとして発進するまでの経緯もそうだし、物件を探す、物件に入れる家具を手配する、場所を開いて運営するといった一連を、プランするだけではなくて、自分のからだを動かして試行錯誤できました。社会の中で活動したんだなという実感があります。

あとは、「範囲は限られるけど超えられる部分もある」感覚も忘れがたいです。メンバー内であがっていた「料理したいね」はガスが使えなくて難しかったけれど、「給湯器があるからチョコレートは湯煎できるね」「ホットプレートでクレープも焼けるよね」と、そこにあるものとちょっとのアイデアの重ね合わせで「できない」の外側にいけたんですよね。

いくら予算があっても、ワガママがないと物事は起こらない。

私が学校外で所属しているNPO法人では、何か企画をするたびに「お金集め」が大きな課題になります。その点、ワガママSDGsはすでに予算が確保されている–––もちろん審査員の皆さんにプランを認めていただかないとはいけませんが–––ので、よこしまな動機ですが、そこに惹かれて参加しました。実際、8月末から動きはじめて「どんな場所をつくろう」のあとにすぐ物件探しに進めたのは、予算があったおかげです。イチから物件費用を工面していたら、12月(成果発表会)なんてすぐに来てしまうから。

一方で、予算だけあっても……とも思いました。先日のクレープパーティーも、お金のパワーがあったから実現できたのは事実だけれど、ゆづぽんの「やりたい!」がなかったらそもそも生まれなかった企画です。それに、ゆうが当初言っていた「障がい者の方と接点をもちたい」は、今回は叶えられなかったけれど、新長田の広場で開催されていたイベントに通りかかったときに「ゆうが言っていたことに似ているな」と蘇りました。そのイベントとゆうが今後つながることがあるかもしれないし、物事は、誰かが熱く語るワガママから始まるんだろうなと改めて感じました。

直接ワガママは実現しなかったけど、「どうする?」を現実的に考える機会になった。

猫を飼っているので、災害が起こったときにペットと穏やかに過ごせる避難場所がほしい–––––というのが、私のワガママでした。物件探しが難航して場所の目的を「学生の交流」に絞るなかで、私のワガママはどこかにいっちゃったんですが、そこはこだわっていません。このチームでの活動が楽しかったので。むしろ、家族と「地震や津波が起きたときにペットたちとどう逃げようか」「私たちが住んでいる街はどういう被害状況になりそうで、どういう避難場所があるのだろう」と現実的な対応を考えるきっかけになってよかったです。

「私もこういうスペースがあるといいなと思っていたんだよね」。居場所に来てくれた友だちの言葉が印象に残っています。誰か一人のワガママではなくて、チームメンバーのワガママをちょっとずつ削ってつなげてつくった場所だから、「自分ごと」に反映しやすいのかもしれない。同じ「あればいいな」をもった子たちが出会ったり集ったり–––––それがいろんな場所でおこなわれたら、十分に持続可能かなって思います。

(構成・文:大森ちはる)